君がいるから眠れる
「……っ、わりぃ……起こしちまったか」
午前3時。
浅く眠っていた私は、寝室のドアが開くわずかな音に反射的に飛び起きた。
暗闇の中で、千空の低く落ち着いた声。
私はベッドの上で身を起こしたまま、小さくううんと首を振った。
驚いた心臓が、静かな部屋の中で早鐘を打っている。
千空は私の肩が小さく震えていることにすぐ気づいたようだ。
彼はカバンを置くと、足早にベッドへ近づき、迷わずそっと腕の中に引き寄せた。
「眠りが浅すぎたか……ビビらせて悪かった」
彼は私の肩口に顔を埋め、深く息を吐き出した。
抱きしめながら、彼は片手で背中をゆっくりと撫で始める。
——ポン、ポン、と。
その手のひらの熱は、高ぶっていた私の心臓の鼓動を、まるで正しいリズムへと導くように響く。
何度も、背中を滑る大きな手のひら。
「……そう、ゆっくり……大丈夫だ」
繰り返されるその言葉と、穏やかな鼓動の音。
彼の体温に包まれているだけで、呼吸が楽になっていく。
「……落ち着いてきたか」
千空が少しだけ顔を上げ、私の髪を優しく梳いた。
「寝ろ。……テメーが寝落ちるまで、ここ動かねえ」
瞼を閉じるまで、背中を優しく撫で続けた。
千空の体温と、一定の鼓動の音に包まれながら、再び眠りへ沈んでいく。
「……おやすみ」
優しく囁かれた声に、ようやく安心して、意識を手放した。
2026/04/17
2026/04/17