秋編【1】迷子のナスって何?<2>

とにかくまずは揚げ浸しだ。 ナスを切り、塩水に浸ける。 塩水から引き上げ水気を拭き、じゅわじゅわとナスを揚げ焼きにしていく。 用意していた浸けタレにぽいぽい放り込んだら揚げ浸しは完成だ。 わたしは染み染みなのが好きなので、これは明日食べる。そのためにタレはすこし薄味だ。 千空さん用はタッパーに入れる。 揚げ浸しの他にも、揚げナス、麻婆茄子。そして味噌炒めも用意した。どれも調味タレを使ったりで凝ってはないが、食事の足しにくらいはなるはず。 マスキングテープを貼り、そこに油性ペンでどれになにが入っているのか中身を書く。 ちょうどいい具合に、ご飯も炊けたので塩おにぎりも2つ付けた。 わたしは揚げナスと味噌炒めをつまみに、ビールで少し遅い夕飯だ。 揚げナスなら日本酒だったかもしれない。まだナスはある!明日にでも日本酒買ってこよう!! 21時を少し過ぎた頃、玄関扉がゴンゴンと音を立てる。 ……ん?ノック?? 立ち上がりドアスコープから覗くと最近見慣れてきた白菜が立っていた。 うおお!?千空さんほんとに来た……ってあれ時間まだ22時には早いけども? メッセでは22時すぎの予定だった。 まあ、もう完成してるから早く来てくれてもいいんだけども。 解錠し、ゆっくりと扉を開ける。 「コンバンワ」 「遅くにわりいな」 「ノックなんて聞いたこと無かったんでびっくりしました……」 「時間が時間だからな。インターホン、結構響くだろ」 気づかい!?すご!!この人そんなこと考えるんだ!?アッ!すんません、失礼すぎる!博士だって集合住宅住んでれば気くらい使うよね!!! 「早かったんですね?」 「キリ良いとこで引き上げたからな。……むしろ、あそこで上げねえと午前様だった」 事情はよくわからないが、ナスのために帰ってきた?……いや、仕事のキリが良かっただけか。 こちらとしても風呂に行こうか悩んでいたところだったので、早めに来てもらって助かった。よし、千空さん帰ったら風呂に入ろう。 「あ、ナスまつり持ってきますね」 「……ナスまつり?」 「あっっ!いえ!!作ったやつ持ってきます!!」 ヒィ!ついうっかり言ってしまった。あまりの多さに、さっきまでナスナスナスナスまつりと変な歌を歌っていたせいで、そのまま口に出してしまった。 千空さんを玄関に立たせたままタッパーを取りにキッチンへ戻る。 適当なビニール袋にタッパーを4つ入れ、ついでに少し冷めたおにぎりも入れた。 「ほんとにナスばっかりなんですけど」 「いや別にそれは構わねえが……んな大量にいいのかよ。タッパー4つだぞ?」 「大丈夫です。それぞれ違うもの入ってまして、わたしの分はわたしの分でありますので」 千空さんが袋を覗き込んで、少し表情を緩めた。 「わりぃな。さっそく家で食うわ」 「一応、塩ですけどおにぎりも入れてます」 「そりゃ、おありがてえ」 「遠慮なくもらってく」そう言って千空さんは帰って行った。 ……あれ?全部持って帰ったな。 こんなにいらねえって少し置いていかれるものかと思ってたんだけど。 キッチンに戻り、野菜室を開ける。 ……だいぶ使ったのに、まだあるナス。 しばらくナスまつりは続きそうだ。 3page >>>

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