秋編【1】迷子のナスって何?<3>
千空さんにタッパー詰めを渡してから数日。やっとナスまつりもフィナーレが近づいてきた。
最終的には半月切りにしたナスで味噌炒めを大量に作った。
これを!白米に!!かけて!!食べる!!
最高だ。甘い、しょっぱい、ナスい!
全部まとめて白米とマリアージュする!
お弁当にも入れられる白米どろぼうだ。
おまえだけで3杯はイケる……いやごめん、3杯はわたしの胃袋がキャパオーバーだった。
盛りすぎた。
転がってスマホを見ていると、玄関扉がゴンゴンと鳴った。
先日と同じ音だ。あれ、もしや?
玄関扉をノックしてくる心当たりは、一人しかいない。
一応ドアスコープを覗いたが、髪の毛が見えた時点で即解錠した。
「コンバンワ…?どうしました?」
珍しい、アポなしだ。
扉から顔だけ覗かせて答える。
「連絡しねぇでわりぃな」
「大丈夫です。まだ寝ないので」
まだ寝ないが風呂は済んでいるため顔はリセットされている。
既にスッピンは見られているので、眉マロでも気にせずそのまま出た。
千空さんが重ねられたタッパーを差し出してきた。
「ナス、どれも美味かった」
「え、ホントですか?」
「あァ。揚げナス、ベチャってねえのな」
タッパーを受け取る。
千空さんは揚げナスから食べたらしい。
「百夜……いや、親父が作ったナス料理は、どれも油吸いまくってベチャってたから、ナスはああいうもんかと思ってたわ」
……もしかしなくても、食べられるけど積極的には食べない、の"食える"だったのだろうか。
ナスって油でギトギトになるから苦手って人、結構いるもんなあ。千空さんも、それか?
「えっと、仕組みはよくわからないんですけど、ナスって、塩水くぐらせたり、塩振ると油をあまり吸わなくなるんですよ。それかな?」
千空さんが一瞬考える表情を見せるが、すぐにクククと声を上げて笑った。
「あー、そういうことか。塩で浸透圧かけて細胞締めてんのか。細胞壁が潰れにくくなる分、油が入り込む隙間も減る」
……ん?要するに油を吸いにくくする科学的根拠があったってこと?
塩だけで?すご!
しかも、どこで聞いたのかも覚えてない知識だったのに。ちゃんと理由があったんだ!!
「……あれ、浸透圧って、この間……あっ、ミニトマトのはちみつ漬け?」
「あぁ、よく覚えてんな。正解だ。100億万点やるよ」
100億満点?デカくね??あ、ちがう??100億万点!?いやもっとデカいな!!いいよそんな多くなくて!!
その点数、なにに使うの?
でもなんかちょっと嬉しい、不思議。
「科学……」
「あァ、違いねえ。料理も科学だ」
心底楽しそうに笑う千空さん。
この人ホントに科学好きなんだな。
科学好きというか科学バカ?……なんでも科学絡めてくるし。
いや、それくらい生活に科学が密着してることも驚きなんだけども。
「……あー、白米専用の味噌炒めならまだあるんですけど」
「ハッ、まだナス食ってんのか」
「いやそりゃ、両手にナスだったので。これで終わりますけどね」
「多すぎだろ」
千空さんが呆れたように小さく笑う
「まあそこまで言うなら食ってやる」
いや、博士氏。ツンデレか?
さすがにこれはわたしでもわかるぞ。
気に入ったなら気に入ったと言えばいいのに。
素直じゃない返答に答えるべく、味噌炒めを取りに一度キッチンへ戻った。
返されたタッパーの中には、飴やらお菓子やらが入っている。
なんか、微妙にお菓子のチョイスがシブいな。
そのへんにあったお菓子を掴んで入れたような不揃いすぎるラインナップに、思わず笑いがこみ上げた。
ナス減って、お菓子増える。
……なんだこれ、わらしべ長者方式?
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